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創 作 英 語 能


P A G O D A あ ら す じ

新作英語能 「PAGODA(仏塔/パゴダ)」 原作 Jannette Cheong

 「PAGODA(仏塔/パゴダ)」は1920年代中国、飢饉に襲われた小さな村で、幼い子どもの生命を守るために苦渋の想いで外国人の手に委ねたJannette Cheong女史の祖母を主人公とし、その家族を題材とした新作英語能である。異国の地に追いやられ、いわば棄民となった子どもは二度と生まれ故郷に帰って来ることはなかった。Jannette Cheong女史は、父親が1970年代ロンドンで死去した後、父の生誕地を捜し中国を旅している。女史の悲喜こもごもとした旅の経験が中国古代の伝説を基底にして描かれている。
 物語は中国東南部にある父親の生まれ故郷を訪ねて来た若き旅人であるワキの名乗りから始まる。旅には父親の形見であるお守りを持参していることを告げる。そこへ昔自分の子どもと悲しい別れをしたシテ、シテツレの母娘が仏塔の前に影を随えて現れる。仏塔に来た理由を旅人に語り終えると、二人は霧の中に忽然と姿を消してしまう。
 アイの漁師が登場し、仏塔伝説と母娘にまつわる話を旅人に聞かせる。旅人の出会った母娘は美鈴という名前の母親と娘の幽霊で、美鈴の子どもこそが旅人の父親であることを暗示する。旅人は漁師の話から自分の父親が美鈴の子どもであり、仏塔で出会った母娘は幽霊であったことを思い知る。
 その夜、母娘の幽霊が再び旅人の前に現れると、旅人は持参した父親の形見のお守りを見せる。それは美鈴が子どもに親子の絆が永遠であるようにとの願いで持たせたお守りと同一のものと分かる。美鈴の子どもは旅人の父親であり、自分の祖母であることも明らかになる。美鈴は息子の死を嘆きつつも、当時多くの子どもたちが飢餓のために命を落としたことを思い浮かべ、子どもが長く生き長らえたことに安堵するのであった。旅人は父の形見のお守りの不思議な力で母娘の幽霊に出会い、今再び母親と息子、家族が夢幻の世界で会うことが出来たことを悟るのであった。夜が明け若き旅人は仏塔伝説と幼くして異国の地に追いやられた無数の子どもたちに思いを馳せながら、独り仏塔の前に仔むのであった。